茶箪笥の奥

メモ置き場

ひとくちアニメ紹介001.ど根性ガエル 73話B『かんかんアキかんの巻』

『叙情的』という言葉が似合う名エピソード。

日曜の午前中。主人公・ひろしが蹴った空き缶が番長・ゴリライモに当たってしまい、『空き缶の借りは空き缶で返す』と意気込むゴリライモ。バットで打った空き缶をターゲットであるひろしに当てようと奮闘するが、なぜかそのどれもが目標を外れ、ゴリライモの舎弟・モグラに当たってしまう、というストーリーである。

このエピソードは、ハプニングの瞬間を見せてくれない。

冒頭の五郎が蹴った空き缶がひろしに直撃するシーンをはじめ、このストーリーのコアといえる空き缶が誰かに当たる瞬間は、基本的に描かれない。(一部例外あり)
効果音が鳴り、空き缶が当たった結果のみが映し出される。
見えないからこそ、見たいという欲求が生まれ、気になってしまう。
正直、空き缶が顔に当たるなんて安直なコメディだし、見えていたらここまで引っ掛からなかったかもしれない。
もちろん、作画枚数の省略という意図があるんだろうけれども、決してそれだけではない、優れた演出だと思う。

また、舞台が堤防に移る後半も良い。
間をたっぷりと取ることによって、日曜日ののんびりとした時間の流れがリリカルに演出されている。
BGオンリーのカットやロングショット、俯瞰レイアウトが多く、高度経済成長期の空気感を詰め込んだような小林七郎氏の背景美術が際立っている。

最終的に、ゴリライモがここまで缶に執着する理由も説明されず、川に流れる空き缶のカットで終了となる。
スラップスティックな『ど根性ガエル』の作風からはかけ離れた、妙に哀愁を帯びた異色エピソードに仕上がっている。

絵コンテ・原画は後に名監督となる小林治芝山努の両名。納得の出来です。

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