茶箪笥の奥

メモ置き場

2022年のアニメ5選

2022年の振り返りを兼ねて。

テレビシリーズ・映画合わせて5作。箇条書き。

 

・ぼっち・ざ・ろっく!

表現の多彩さにおいて、現在の日本の商業アニメの最適解じゃないかと思っている。

主人公のぼっちちゃんこと後藤ひとりは極度のコミュ障で、焦ると様々なリアクションや被害妄想が繰り出される。
顔のパーツが崩れたり、体が溶解するのは序の口。劇中でエンドロールが流れ始める(第1話)、劇中にエンドカードが登場する(第3話)、突然実写のペープサートが始まる(第3話)、視界にノイズが入り落書きタッチになる(第4話)、嘔吐する場面でダムの実写映像が流れる(第5話)……これ以降もどんどんエスカレートしていく。
その鋭く豪快な映像表現は、『彼氏彼女の事情』や『フリクリ』の頃のGAINAX、あるいは『ぱにぽにだっしゅ!』『化物語』辺りのシャフトのエネルギッシュさを想起させられる。

ドラマ部分の巧みな話運びも素晴らしい。
原作4コマの行間を埋めるような解釈の広げ方も良かった。
それに応えるような写実的な日常芝居・背景美術も常に高水準。
凄いアニメ。

 

サイバーパンク:エッジランナーズ

めちゃくちゃアップデートされた『DEAD LEAVES』だ……と思った。

『DEAD LEAVES』は今石監督の初作品で、バカバカしい下ネタとゴア描写たっぷりの尖ったアニメ。
グレンラガンキルラキルも好きだけど、私は今石監督のこういった作品をずっと観たかったので、本当に嬉しかった。

退廃的で刹那的な世界観で、テレビシリーズではありえないような過激なシーンも多数。
体制側に踏みにじられ、歯向かいつつも最終的に破滅に向かっていく、というアメリカン・ニューシネマ的なストーリーも、昨今のテレビシリーズではなかなか観られない気がする。

特に好きなエピソードは6話。とあるキャラの最期を鮮烈に、ハードに描き切った名エピソード。

 

・BIRDIE WING -Golf Girls' Story-

驚きと興奮に満ちた作品。最高のエンターテイメント。

とにかく先が読めない展開が魅力。
ゴルフの試合描写はかなり外連味に溢れている。必殺技や謎装置、コース上を障害物を破壊してしまうような展開は、男児向けホビーアニメに近い。
ありえない!と思ってしまうようなことも、この作品なら妙な説得力がある、気がする。

当初の印象はスポ根系だが、話が進むにつれ裏社会の抗争のような展開に。また、中盤から始まる日本編は、打って変わって学園スポーツアニメっぽい作風へ転換。先週まで生きるか死ぬかの話をしていたのになんだそれは。

春クールはこのアニメに翻弄されていた。

 

・犬王

南北朝室町時代に実際に存在し、当時世阿弥と人気を二分していたという能楽師・犬王を現代のポップスター風に描いた歴史ミュージカル映画

犬王の作品は現存していないため、「当時世間を熱狂させた」という記録を大胆に解釈し、琵琶とグラム・ロックを融合させた奇抜なミュージカル映画になった。

この作品では犬王は異形の子として描かれている。彼のパフォーマンスが評判になり、大衆化、果ては体制側に至るにつれ、犬王は普通の人間の姿になっていく。そういったアイロニカルなストーリーが良い。

作画表現が素晴らしい。アニメーションのプリミティブな気持ち良さを捉えた湯浅監督のフィルムは、初期衝動的なロックとの相性も良い。
犬王のパートナーの盲目の琵琶法師・友魚の主観視点の特殊作画も印象的。

後半の将軍の面前で笑う犬王のシーンのインパクトがすごい。頭を下げている時の鬼のような形相→満面の笑みのギャップが怖い。アヴちゃんの演技も強烈だった。

 

かがみの孤城

不登校の少女・こころが謎の城に迷い込み、そこにいた6人の少年少女と交流を深めて……というアニメ映画。
エンタメ的な「世界や彼女たちの謎を解くミステリー」とドラマ的な「こころのいじめのショックからの立ち直り」の二本を軸として進む。

予告編の印象はファンタジー寄りの作品なのかな?という感じだったけど、実際は現実世界の場面も多かった。
実写映画的な間で語る作品。奇をてらうようなことはない、静かにトラウマと闘う映画という印象。

テーマがテーマなので深刻なシーンは多い。中盤のいじめっ子が自宅にクラスメイトを連れてくるシーンは、映画館の音響も相まって本当にキツかった。原監督らしい悪意の描き方。

印象的だったのが衣装設定の豊富さ。ちょうど1年を通したストーリーだけど、場面ごとに全く違う服を着ていて、リアリティに一役買っていたと思う。

 

その他良かったアニメ

◇テレビ/配信シリーズ

 ・明日ちゃんのセーラー服

 ・地球外少年少女

 ・ヒーラー・ガール

 ・かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-

 ・メイドインアビス 烈日の黄金郷

 ・Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-

 ・ヤマノススメ Next Summit

 ・モブサイコ100

◇アニメ映画

 ・雨を告げる漂流団地

 ・四畳半タイムマシンブルース

 ・すずめの戸締まり

 ・THE FIRST SLAM DUNK

◇話数単位

 ・王様ランキング 21話「王の剣」

 ・ONE PIECE 1015話「麦わらのルフィ 海賊王になる男」

 ・モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~ 第7話

◇MV/短編など

 ・心臓 / TOOBOE

 ・YOKU / Eve

 ・曇り空の向こうは晴れている / 22/7

 ・風のゆくえ / Ado

 ・「赤練と氷る雁」- 新武者・顧清寒アニメ動画 - YouTube

『平家物語 アニメーションガイド』備忘録 + 新版画と近年のアニメ

www.kadokawa.co.jp

とても良いアニメムックでした。

各セクションのスタッフへの細かなインタビューに加え、美術・小物設定、絵コンテの一部など、大量の資料が素晴らしい。

個人的には各話ごとにスポットを当てての演出解説が嬉しい。
レンズ効果や構図・撮影処理などがどういった効果を見せているかといった解説や、各話数の絵コンテ・演出担当の方のコメントもあります。ここまでやっているムック本は珍しいのではないでしょうか。

 

このムック本には、『新版画』関係のトピックが何度か登場します。

久保美術監督、出水田撮影監督のインタビューでは、新版画家として知られる小村雪岱や吉田博がリファレンスとして挙がっており、特に水面の映り込みは吉田博『帆船』の描写を参考にしているとのことです。


平家物語3話より


平家物語9話より


吉田博『帆船 朝』

 

 

以下、ここ数年の新版画×アニメの備忘録的まとめ。


『サイダーのように言葉が湧き上がる』(2021)
美術監督:中村千恵子

イシグロショウヘイ監督は、新版画からの影響を強く公言している方です。

youtu.be上記の動画では、サイコトの背景美術において影響を受けた人物として、鈴木英人と並んで吉田博・川瀬巴水の名前が挙がっています。

雑誌『東京人』の新版画特集にも登場しています。この雑誌もオススメです。toshishuppan.co.jp

 

『MARS RED』(2020)
美術監督:加藤浩、坂上裕文

『MARS RED』の背景美術は、川瀬巴水を参考にされたとインタビューで発言があります。

febri.jp

www.youtube.com『なつなぐ!』(2020)
美術監督中村豪希

熊本地震の復興PRとして熊本県が製作したご当地アニメ。
落ち着いた色彩とはっきりした輪郭線が新版画を彷彿させます。

 

www.youtube.com

古見さんは、コミュ症です。』OP映像(2021)
美術監督:佐藤勝

リーニュクレール。
80年代ポップカルチャーわたせせいぞう鈴木英人・永井博)の影響が指摘されていますが、それらに比べるとビビッドさはかなり控えめ。
かといって新版画風かと言われるとだいぶ違う気がする。あくまでも主役は古見さんで、人物にフォーカスされているからかもしれない。

しかし何度観ても作画も音ハメも完璧で素晴らしいOPです。

『明日ちゃんのセーラー服』のバス 備忘録 + バス内部演出いろいろ

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明日ちゃんのセーラー服(2022)#11「同じ時間…みんなと…」
絵コンテ:三浦貴博 演出:牛嶋新一郎

バスで小学校に移動するシーン。
柱によるフレーム内にクラスメイト全員が収まっている一方で、フレームの外側に一人だけそっぽを向いている花緒(の頭)が配置されている。
彼女たちの一体感を示すとともに、花緒の自由さ・無邪気さを表現しているように見える象徴的なカットです。

 

バス内部の構図といえば、9話にも登場していました。

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明日ちゃんのセーラー服(2022)#09「せ~のっ!」
絵コンテ:舛成孝二 演出:神谷望夢

こちらも同様に柱による境界線の演出。
読書に夢中な古城さんと小路の隔たりを感じさせます。

9話のバス内部のパートは、セリフも極限までそぎ落とされていて意欲的な演出でした。

 

以下、バス内部演出で思い出したもの。

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かげきしょうじょ!!(2021)#08 「薫の夏」
絵コンテ:阿保孝雄 演出:江副仁美

近年、バスを効果的に使った回といえば真っ先に思い浮かびますね。
柱や影による境界線や、バスの揺れと感情の揺らぎがリンクする演出が見事。

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『あなたと私、ちょっと似てるなぁって』の後のカット。
つり革・柱を使って片方を隠しつつPAN。インパクトのある表現です。

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バスの通路を銀橋に見立てる演出も面白い。

 

 

 

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SSSS.GRIDMAN(2018) #04「疑・心」
絵コンテ・演出:藤井辰己

柱による境界線演出。やはり定番なのでしょうか。
互いの目も合わせない会話は、アカネが降車ボタンを押すまで続きます。
アカネが冗談めかすと、二人は同じフレームの中に。一気に緊張感が解ける。

 

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SSSS.GRIDMAN(2018) #08「対・立」
絵コンテ:久場良忠 演出:高嶋宏之

同ポで8話にも登場。
アカネは座席の手すりで出来た囲いにすっぽりと収まっている。
彼女のキャラを知っているとかなり暗喩的に見えてきます。

最近観て良かった短編アニメ(Naraka Bladepoint: Crimson & Winter Animated Short)

www.youtube.com

『NARAKA:BLADEPOINT』というバトルロイヤルゲームのプロモアニメ。
 Final FrontierとLe Cube studiosという海外のスタジオが制作。監督はRalph Karam。
海外アニメですが、アクションのタメツメはかなり日本っぽい印象です。

www.finalfrontier.tv

www.lecube.tv

1:15辺りからのカットが好き。ショックコマをはさみ、雪山から黒っぽい空間への場面転換。
空間を縦横無尽に動き回り、ドラゴン(?)にメタモルしたりと、外連味あふれる表現が観ていて楽しい。

トランジションが滑らかでかっこよくて、特に1:33辺りの目へのズームインからの回想への転換が良い。

www.youtube.com

日本語吹き替えもある。直訳感あるタイトルがキュート。

明日ちゃんのセーラー服 7話 備忘録

良い回でした。

 

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教室の扉を開けるカットとギターケースのファスナーを閉めるカットが同じカメラポジションで描かれている。

どちらも蛇森さんの心情のメタファー的に挿入されているカットですが、ファスナーを閉める方が秒数が少なくスピード感があります。
木崎さんの演奏を聴いたことによる焦燥が強調されているように見えます。

 

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このカットの芝居も良い。
蛇森さんが「ホントはギターなんて弾けない」と告白するところですね。

ゆっくりと動き始め、やや早歩きで小路から遠ざかる。
作画カロリー的に普通は止め絵にするカットだと思うのですが、動きがあることによって生々しさが際立っています。
蛇森さんの、葛藤や羞恥などがミックスされたとりとめのない感情がダイレクトに伝わってくるようです。

このカットに限ったことではないですが、重心を意識したリアルな歩き方が良いですね。

 

 

ストーリーについて。

ギターの弾けないギター少女蛇森さんが、小路の勘違いによりギターの練習を始める。

ちょっとした虚勢から日常が崩れ、変化していくというのは王道パターンですが、その変化の過程がとにかく丁寧。

今回のメインである3人の心境の変化が、20分間に詰め込まれています。

 

小路

相変わらず無自覚に影響を与えまくるトリックスターですが、今回は同時に周りからの影響を受けやすい側面も描かれていました。
Aパートの「音楽かー、それもいいかも」「お姉ちゃん集中して!」というやり取りは、彼女の移り気を端的に表現していますね。
最終的には、木崎さん蛇森さんの演奏を聴いたことにより、演劇1本で頑張る決意を固めました。

 

蛇森さん

小路に日常を壊された人。
見栄っ張りだけどなかなか一歩を踏み出せないキャラクター。
小路や戸鹿野さんの努力する姿にあてられ、弾き語りまで至ります。
弾き語りシーンのラストで声が上ずるのがリアル。

 

戸鹿野さん

バスケ部の人。蛇森さんのルームメイト。
Aパート時点では若干諦観ぎみにも見えますが、体育館裏での会話により、完璧に見える小路も地道な努力を重ねていることに気づきます。
フリースローのシーン、AパートとBパートでは表情が全く違います。

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3人の関係性が素晴らしい。
スパダリ的に描かれがちな小路も、蛇森さんや戸鹿野さんから感化されているという構図が良い。

 

 

絵コンテ・演出はMoaang氏。
ワンダーエッグ・プライオリティ3話の階段での戦闘シーケンスの方として記憶していました。海外の方らしい。

単話の絵コンテ・演出は今回が初めてだそうです。

作監は川上大志 氏。CloverWorks所属のアニメーター。本作のサブキャラクターデザイン。

 

『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』ファストフード店での日常芝居について備忘録

『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』ブルーレイ発売おめでとう記念ブログ。

 

今回ブルーレイで改めて観て、タイトルのシークエンスがとてもよかったのでつらつらと書いていきたい。

映画館では、後半のレヴューが強烈すぎたせいであまり印象に残らなかったけど、前半もかなりクオリティ高いんだなぁと改めて思った。

 

 

華恋の中学生時代(3年前)の回想シーン。

同級生男女7名(華恋含む)でファストフード店で修学旅行の予定を立てている。

歌劇のレッスンの時間になり、華恋が店から出ていく。という場面です。

 

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華恋がトレイを持ち上げるカット。

斜めに持ち上げていて、皿やジュースが傾いている。

慌てている時はついこういう持ち方をしてしまいがち。

急いでレッスンに行きたい華恋の心情が視覚的に分かる表現。

 

ネクタイが少しだけ椅子に引っ掛かってから垂れ下がる動きもいい。

 

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ゴミ箱の位置を確認するために、一瞬だけ奥を向く芝居が細かい。

ゴミを入れる仕草。まず皿を持ち上げ、敷き紙とジュース、おしぼりの袋を一気にゴミ箱に捨てている。

ジュースの蓋とストローを分別していないのはなぜなんだろうか。実はすべて紙製だったりするのか。それにしたってジュースの氷はどうなったのか。全部飲んだのか。

忘れがちだけど、華恋はかなり大雑把でマイペースな性格。それを表現するためかもしれない。

階段の手前でいったんスピードを落とす。リアリティのある動き。

 

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踊り場で友人と鉢合わせ。

鉢合わせのタイミングで、2階からのショット→1階からのローアングルのカット割り。

友人の邪魔にならないようすぐ踊り場の隅に寄る華恋。

 

友人は右足と左足が別の段で止まっている。

トレイを持っている状態でそれは不安定、というか危ない。

姿勢を安定させるため、一呼吸入れて左足を一段上げる。

さりげないけど、同じ状況だったら自分たちも当然そうなるよね、となる良い芝居。

 

友人を振り返りつつ階段を降りる華恋。

階段を降りる動作だけでもかなりの作画カロリーなのに、下を確認したり、立ち止まったりと綿密な芝居づけがうまい。

スカートやネクタイのちょっと大げさな揺れ方もいい。

プリーツの立体感、たまんないですね。

 

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店外へ。

足だけのカット。地面を映すことで雨がどれほど降っているのか分かりやすい。

もぞもぞと足を動かし、折り畳み傘をチラ見せ。

 

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ロングショットで折り畳み傘を開く作画。

細かい! ここまで折り畳み傘に熱意があるアニメ、あまり見ない気がする。

難しそうなカットなのに、これをロングでやっているのもすごい。

 

 

このシークエンス、階段が2回登場する。

ファストフード店での階段を降りるシーン。

屋外の歩道橋を昇ろうとしているシーン。

 

この後に挿入される下の歩道橋の上でのカット。

このカットに合わせ、下記の友人のセリフが入る。

「すごいよー、舞台の華恋。歌もダンスもめっちゃくちゃうまいの。」

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このセリフにより、歩道橋が舞台のように見えてくる。

「友人たちとの時間から抜け出し、舞台へ向かう華恋」のメタファーではないだろうか。

 

友人たちは舞台の華やかさを語っているが、この歩道橋は悪天候。決して華やかとは言えない。むしろ、ファストフード店の方がキラキラしているような気がする。

華恋の舞台やひかりに対する複雑な感情や迷いが現れている、印象的なカットです。

 

 

結論

『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』観ろ。

アニメ『古見さんは、コミュ症です。』1話 備忘録

脚本:赤尾でこ

絵コンテ・演出:川越一生

作画監督:早川麻美、近藤瑠衣、小川茜

総作画監督中嶋敦子

 

 

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冒頭から調子っぱずれな歌声で聞こえてくる唱歌『一年生になったら』。

後に明かされる古見さんの夢「友達100人つくりたい」がここでもう登場しているわけですが、肝心の『♪友達100人できるかな』の部分は鼻歌になっています。古見さんの自信のなさの表れでしょうか。

 

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黒猫の目→古見さんの後頭部へのマッチカット。かっこいい。

 

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只野くんと古見さんの初対面のシーン。

スミアの光が古見さんの心臓部から出ています。緊張が伝わってきますね。

 

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古見さんの筆談シーン。

一脚だけ後ろに引かれた椅子、一本だけ倒れているトンボ等、古見さんの孤独を端的に示す小道具も効いていますね。どれも画面の端に追いやられており、不安感を醸し出しています。

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只野くんと筆談を始めた後のカットでは、教室内の床に落ちていた鞄が消えています。些細な心境の変化を語り掛けてくる雄弁な演出です。

 

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チョークの粉の演出。古見さんの涙→桜の花びらのメタファーの転換は本当に驚きでした。クールすぎます。

このアニメ、フェティッシュな作画も多く、上記のカットは背伸びをした時の上履きのたわみが再現されています。作画アニメとしても楽しめます。

 

 

原作は序盤を多少読んだくらいで、すごく好みの作品というわけではなかったのですが、作画や演出、レイアウトや撮影も妥協がなく、最高の1話だなと思いました。

制作はOLM。正直キッズアニメの印象(+2000年前後の高橋ナオヒト監督作品)が強かったので、こういったアニメを作ることに驚きでした。

1話の絵コンテ・演出を担当された川越一生監督はお恥ずかしながら存じ上げなかったのですが、『ベイブレード』シリーズで尖った演出をしていると評判な方らしいです。